人,人,人…カメラ付き携帯を高く掲げる人の手で,花火が見えない。
花火を横目に人込みを押し退けひたすら歩く。
人込みから抜けたと思うと,せっかくの浴衣がイカ焼きのタレでシミだらけ。
何が楽しいんだか分からないが,お祭りは妙にテンションが上がる。
ヒロコは同じくテスト期間中の仲間たちと,浴衣で着飾って祭に出掛けた。
この先,卒業間近のこの仲間たちとは,遊ぶ機会も減るだろう。
それぞれに,自分の向かう道へ進んでいく。
一夜限りの浴衣なのに,合わせるカバンから下駄までこだわって,
髪形にもメイクにも,そして爪の先にも時間をかける。
「この浴衣にこのカバンはないわ?」
「マニュキアこれ合う??」
「髪形やったげるわ」
そんな事にこだわる女の子って可愛いな,なんてオッサンのような事を思いながら,
ヒロコもその儚いお洒落を楽しんだ。
一方,同じ頃,ハルカは相変わらず忙しくしていた。
インターンを終えて帰り道,梅田の異常な混み具合にうんざりしていた。
浴衣姿がやけに多い。
あぁ,そういえば今日は…
花火なんて地元の祭で見飽きてる。
それに,今は,やらなきゃいけないことが…
それで頭がいっぱいで,お祭りどころじゃない。。
でもそれだけ忙しい自分が,嫌いじゃない。
どこか,酔っていた。