『ダブル』
あれはもうどこかへ行ってしまった。
あんなに人を振り回しておいて、あっさりしたものだ。
私にとっては、消えてくれてよかったのかもしれない。
でも、形を変えてまた現れるような気もする。
それに怯えながらも、楽しみにしている自分がいる。
ただ、確かに、今、あれはもういない。
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あれはもうどこかへ行ってしまった。
あんなに人を振り回しておいて、あっさりしたものだ。
私にとっては、消えてくれてよかったのかもしれない。
でも、形を変えてまた現れるような気もする。
それに怯えながらも、楽しみにしている自分がいる。
ただ、確かに、今、あれはもういない。
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桜が散り始めた。
俺はまだ新学期の準備も整っていないまま、
それでも始まってしまった学校へ何となく通う。
あいつはインターンを始めることを決意し、
人の忠告を完全無視、早速面談へ行った。
「それがな、めっちゃ早く行ったのに場所わからんくて。
いきなり遅刻しちゃってん。でも担当の人が優しくて…」
もう4月半ばだというのに、アホほど寒い。
春だ、新しい服買え、と宣伝しまくる街がうるさい。
しかも今日は雨まで降ってきた。
何なんだよもう。今頃風邪ひいた俺が悪いのか。
こんな感じでこっちは最悪な気分だが、あいつは上機嫌。
インターン総研で面談を済ませ、今は連絡待ちらしい。
面談を終えてから、何故か自信満々だ。
今日も雨が降ったり止んだりの微妙な天気。
でもあたしはかなりドキドキのテンションです。
なんと!
インターンの面接が決まりました(~o~)
この前、ふとインターンやってみよ、って面談行っちゃって。
慎重に考えろ、とか文句ゆってくる奴もいたけど、
でも、やろう!て思いついたらすぐやった方がいいやん?
柔らかい風が吹く中、シンジはあるビルの前に立った。
バイト先の面接時間にはまだ早い。
面接場所の目の前の店でぶらぶらしながら時間を潰す。
家具を物色するフリをしながら、イメージを膨らせる。
今日の面接では、あの小さな爆発は起こるだろうか。
面接官との出会いだって、ひとつの貴重な出会いだ。
ヒロコは大学の授業で教授の言葉に感動した。
『「言論の自由」という枠組みが保障されている』
先生はこんな事を言った。
自由という枠組み、なんておかしな言葉だ。
でも何か自分の中で、妙に納得いくものがあった。
「言論の自由が保障されている」、
そうではなく、その「自由という枠組み」と言った。
大学1回生のハルカは今、インターンに熱中している。
朝いちばんに会社へ行き、授業ギリギリまで仕事。
会社から学校へは走らないと間に合わない。
授業に出ても、頭の中では仕事のことを考えている。
何の役に立つのかも分らない授業を受けるよりも、
仕事をしているほうが、確実に社会の役に立ってる。
勉強なんて机上の理論を振り回すだけで、
自分の手で何も作り出していないじゃないか。
シンジは、飲食店でバイトを始めた。
今までやってきたバイトは家庭教師や事務仕事。
正直、飲食の仕事なんて、どこかで見下していた。
注文を取って、料理を運んで、片付けて。
同じ事の繰り返しだ、と。
働き出してみると、確かにそう、同じ事の繰り返しだ。
「あたしのお兄ちゃん、インターンにハマり過ぎて、留年してん。
勉強の何が楽しいの?俺は働いてる、とかゆって。」
飲みに行った友達からそんな話を聞き、
ハルカはどきりとした。
そういえば前に、ヒロコに冗談で言われた。
「なんでそんなに働くん?
キャリアアップのためにインターンして、
それで留年とかしたら逆に就職できへんでー(笑)」
最近少しずつではあるが、バイトをしているヒロコ。
ただ、バイト先の周りの人々を見ていると、自分のバイト観に自身がなくなる。
たとえば、あるバイト先の友達は、いくとものバイトを掛け持ちし、
生活費から学費まで全て自分で払っている。
同じ時間にバイトを終え、「やっと終わった、疲れたー」と弱音を吐く自分と、
「私、これからもう1個のバイトなの」とサラリという彼女。
最近、どうもやる気がしない。
ヒロコは行き詰まっていた。
勉強は嫌いではないが、近頃は教科書を開くのが面倒だ。
バイトが意外と忙しくなってきた、という言い訳もある。
勉強だけでなく、色んな事が面倒になっている。
サークル、勉強、バイト、家での生活。
「今日はしんどいから明日頑張ろう」
毎日そう呟いている。
「この歌が部屋のドアを叩きに来たって
胸を張れるから」
こんな歌詞を歌った歌手がいた。
自分の言葉が自分に帰って来た時、私は胸を張れるだろうか。
人,人,人…カメラ付き携帯を高く掲げる人の手で,花火が見えない。
花火を横目に人込みを押し退けひたすら歩く。
人込みから抜けたと思うと,せっかくの浴衣がイカ焼きのタレでシミだらけ。
何が楽しいんだか分からないが,お祭りは妙にテンションが上がる。
ヒロコは同じくテスト期間中の仲間たちと,浴衣で着飾って祭に出掛けた。
この先,卒業間近のこの仲間たちとは,遊ぶ機会も減るだろう。
テストもついに終わり、学校は夏休みに入った。
ヒロコはバイトに旅行、合宿など、色々計画を立てていた。
一方ハルカも、この夏休みを待ちに待っていた。
これで毎日インターンに行ける。
ヒロコには、そんなハルカの神経はさっぱり分からない。
何が楽しくて、このせっかくの長期休暇にインターン…
最近、環境問題、に興味を持ったヒロコ。
元はと言えば、掃除中に、自分が昔読んだ絵本がきっかけだ。
宅地開発のため住み処を奪われ、旅に出るウサギたちの物語。
懐かしいな、とページをめくるうちに、小さい時の感覚が蘇る。
そういえば、私は動物が大好きだった。
小学校の時から、シートンに椋鳩十、といった動物記ばかり読んだ。
インターン先の先輩たちに飲みに連れて行ってもらったハルカ。
ビールは苦手だが、ほろ酔いの社長や先輩たちの話を聞くのは結構好きだ。
普段の仕事の話とはまた違う、人生論なんかも聞けるからだ。
大学生活に不安を感じるハルカにとっては、今一番聞きたい話だ。
でも、「お前はこの先何をやりたいんや」と言われると、
言葉に詰まってしまう。
ヒロコは高校時代の同窓会へ。
ひとしきり近況報告を終えると、思い出話で盛り上がる。
思えば、高校時代のヒロコにとっては、学校が世界の中心だった。
休憩時間や放課後をどう過ごすか、そればかり考えていた。
友達と仲良くなれるか、いつもそれが一番の悩みだった。
学校での自分が全てで、社会の中での自分の立場なんて、考えた事もない。
大学生にもなって、夏休み最終日に宿題に追われるヒロコ。
なんで2ヵ月もあったのに今更…
こんな事になるならもっと早くやっときゃ…
小学生の時と変わらない自分に気付く。
「夏休み何してた~?」
久しぶりに会う友達との最初の会話はコレだ。
日々インターンに燃えるハルカ。
毎日バタバタして忘れかけていたが、
誕生日が近づいていた。
誕生日といえば、ハルカのインターン先で印象深い事があった。
それは、誕生日の人がみんなにお菓子を買ってくることだ。
誕生日といえば何かもらえる事を期待してしまうハルカにはかなり衝撃だった。
ハルカは、忙しいのが好きだ。
余計な事は考えず、ひたすら時間に追われる。
今のハルカの生活は、5割インターン、2割学校、2割バイト、その他1割。
予定はカツカツだが、それが結構うれしかったりする。
忙しく時間に追われている時、「あぁ私がんばってる」と感じられる。
一方、学校中心のヒロコは結構ヒマをもてあましていた。
やるべき事はあるのでヒマ、というのはおかしいが。
いつの間にか街はクリスマスの飾りだらけになってきたこの頃。
大学生のハルカは相変わらずインターンとバイトに追われていた。
意気揚々と通うインターンと違って、渋々始めたバイト。
それもいつの間にか半年続いていた。
オープニングから始めたバイトだった為みな同じスタート。
しかし最近、新しい人がたくさん入ってきた。
それにしても、バイトというのはいい身分だと、今までは思っていた。
「うちらが日本を支えてる気がするねん」
フリーターの友達がそう言った。
フリーター増加が問題だ、という本をパラパラ見ながら続ける。
「それにフリーターを都合よく使ってるのは大人やん」
大人、というくくりはどうかと思うが、
フリーターが日本を支えてる、というのは間違いではないと思う。
飲み会続きで寝不足のヒロコ。
気持ちよく酔った気はするが、あの時間は何だったんだろう…
どうも不毛な時間を過ごした気がしてしまう。
でもこれも人付合いってもんか、と割り切って
また忘年会へ。
一方、ハルカはこの飲み会は好きだ。
とくにインターン先の飲み会。
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